胸を張っていてはいけないことながら、
前々からの話であり、自覚さえあったこと。
それを今更、あらためて指摘されることがある。
確かに、人の特性としてはあまり長所とは言えないこと。
接した相手を戸惑わせたり、周囲の者を困らせたりもするのだろうし、
出来ることなら改めたほうがいいのだろうと、常々 理解してはいる。
とはいえ、自分を叩いて叩いて伸ばして来たせいか、
どうにも気性が堅く、愛想というものに縁がなく。
我ながらどうにも苦手な範疇へのことなだけに、
なかなかあらためることも難しく。
「…だから。
僕が言ってるのは、そういう意味で、じゃないんだってば。」
取り違えもいいトコだよと、
困った奴だねぇと言いながら、それでも可笑しい方が勝るのか。
表情豊かな目許を細めて、やたら苦笑をするばかりな桜庭で。
「周囲が困るって把握が進の側にもあるってのは、
失礼ながら意外だったけれどもね。」
そんな自覚も、実は最近になって芽生えたんじゃないの、と。
今度は別口の想いを含ませ、くすすと柔らかく笑って見せてから。
「だから、さっき僕が言ったのは。
機嫌が悪そうな顔をして、
相手を困らせたり萎縮させたりするって意味合いのじゃなくて…。」
◇ ◇ ◇
桜庭との話の切っ掛けそのものは、何とも他愛ないこと。
今こうして間近なそれとして見下ろしている、
何とも指通りのいい髪のこと。
「猫っ毛なんで張りがなくって。」
寝癖のつきやすい細い質なのを、気にしているそうだけれど。
この膝へと抱えていることを、
じっと見つめていても信じがたくなるほど、
ふわり、頼りないほど軽いその身だとか。
どこに置けばいいのやらとあたふたしていて、
やっとこちらの胸の上へと落ち着いた、
子供のそれのようにまだ節も立たず、
手首がほとんど袖口に埋まりかけている小さな手とか。
髪を梳き降ろした指先でそのまま、
いつまでも触れていたくなる感触の頬やら顎やら、
やさしい輪郭に縁取られた面差しとか。
「? どしました? ////////」
顎を引いて覗き込んだ、こちらからの視線へ。
含羞みながらも ほわりと微笑ってくれる、
すっかり和んでいてくれる。
そんな愛らしい彼のことを話題に上らせたところ、
桜庭は肩をすくめてから、今更なお言いようを向けて下さり。
そんなことくらい、言われずとも判っていること、
何も今、指摘せずとも良かろうという顔になったのへ、
そうじゃあなくってと今度は呆れ、
『セナくんのと たまきさんのとが同じだって気づいたってことはサ、
髪の匂いが判るほど、
それほど間近まで顔を寄せたことがあるってことじゃない。』
お風呂から上がったばかりならともかくも、
セッケンの匂いとかシャンプーの匂いとかってのは、
そうそう届くものじゃあないからねと。
いやに判ったような言いようをしてから、
『そんな艶っぽい話をするようには到底見えないのにさ。
もしかしてセナくんの髪に鼻先埋めたことがあるようなこと言って。
そういう奴のことを、言うんだよ。』
――― こんの“むっつりスケベ”ってねvv
「終始むっつりしているというのは、
居丈高に見えて傲慢な態度なのだろうか。」
「さあどうでしょうか。
あ・でも、進さんの場合は、
貫禄があるって言うか存在感があるって言うか。
威風堂々としているところが、
ボクなんかは惚れ惚れしちゃいますけれどvv///////」
「………そうか。///////」←あっ
〜 終わって下さい 〜 08.2.5.
*お題は“シャンプー”でしたが、これでは“むっつり”の方が主題ですね。
おっかしいなぁ。(う〜んう〜ん)
むっつり進さん、旅日記。(おいおい)
別に方向音痴ではなかろうに、
GPSをあっさり壊した富士山でのあの一件以来、
一人歩きさせると迷子になるんじゃあ…と、
ついつい思ってしまいがちなのは、私だけでしょうか?
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